
ベントレーの未来のビジョンを具現化するコンセプトカー(EXP15)を発表
- EXP 15は、伝統的なモデルから着想を得ながら、未来を再構築し、過去と未来をつなぐベントレーのビジョンを体現したコンセプトカー
- 販売を目的としないフルサイズのエクステリアモデルと、バーチャルリアリティによるインテリアが組み合わされたEXP 15は、2026年に公開予定のブランド初となる完全電動自動車に向けたデザインのヒントを示す
- 伝説的な1930年の3シート、ベントレー「スピード シックス」(通称:ブルートレイン)から着想を得る
- 先進的なスポーティーセダンのコンセプトには、象徴的な直立グリル、ロング エンドレス ボンネット、リアキャビン、そして力強いリアフェンダーの現代的かつ光技術を活用した解釈が含まれている
- 革新的で柔軟な3シートレイアウトにより、乗客のリラクゼーションが向上。手荷物やペット用の収納スペース、さらにはアウトドアパーティー向けのテールゲートシートも完備
- インテリアは、物理スイッチとデジタルインターフェースの融合が特徴で、ドライバーの気分やニーズに応じて切り替え可能
- 英国の伝統工房との協力により、クラシックで高級感ある自動車用生地の活用を探求
- 1919年のオリジナルにインスパイアされた新しい「ウィングドBエンブレム」を採用し、ベントレー伝統のインテリアダイヤモンドキルトパターンも新たな内外装用途として再構築
- 完全電動自動車・全輪駆動のパワートレインは、ラグジュアリーかつサステナブルなグランドツアーの未来を定義
このEXP 15は、
全長5メートルの外装モデルは、直立した象徴的なグリル、ロングノーズのボンネット、後方に配置されたキャビンというクラシックなプロポーションを採用しています。
これは、1930年製のベントレー「スピード シックス ガーニー ナッティング スポーツマン クーペ」のオマージュであり、「ブルートレイン レース」で知られる逸話とも深く結びついています。このレースでは、当時のベントレー会長でありベントレー ボーイズの一員でもあったウルフ・バーナート氏が、南仏カンヌを出発した高級列車「ル トラン ブルー」よりも先にロンドンに到着したという壮大な記録を打ち立てました。
EXP 15は、現代的なエクステリアサーフェス処理、先進的なライティングディテール、アクティブエアロパーツなどを組み合わせることで、2025年におけるベントレーのコンセプトカーとして、過去と未来のクラフツマンシップの美学を巧みに融合させています。
販売を目的としたモデルではありませんが、このコンセプトカーは、ブランド初となる完全電動自動車へと向かうデザインの進化を示す重要なステップとなります。
キャビンにおいても、先進的なデザインアプローチが貫かれています。設計には仮想現実(VR)ソフトウェアが用いられ、お客様は多様な構成や仕上がりを視覚的・体験的に確認できるようになっています。この手法により、ラグジュアリーなシートや翼のような造形のダッシュボード、ステアリングホイール、各種スイッチやダイヤルといった物理的なインテリア要素に加え、運転者の気分や目的に応じて自然に現れたり静かに背景へと溶け込んだりするデジタル要素が、空間全体と滑らかに調和し、魅惑的でインテリジェントな空間を創出しています。
設計において特筆すべきは、従来の4シート・5シート、4ドア・5ドア構成とは一線を画す、3シート・3ドアというユニークなパッケージングです。この独自のレイアウトは、選ばれたユーザーに特別なドライビング体験を提供するだけでなく、荷物やペットのために設計された、工夫を凝らした収納スペースを車内に組み込み、快適性と機能性を両立しています。
さらに、リアのブートスペース(トランク)は停車時にピクニックシートとして活用できる設計となっており、移動とレジャーをひとつの体験として楽しむことが可能です。
インテリアにおける素材選定にも、ベントレーならではの美意識が反映されています。伝統やクラフツマンシップ、サステナブルを大切にしながらも、未来的で先進的であることを追求しています。
例えば、250年以上の歴史を持ち、有刺植物を防ぐ布の発明でも知られる英国フォックス・ブラザーズ社による100%ウールのファブリックが、インテリアにダムソン オンブレ(濃淡グラデーション)効果をもたらし、軽量な3Dプリント製チタンパーツと美しく調和しています。さらに、ユーザーエクスペリエンス(UX)も極めて重要な要素です。車内空間は、操作性、快適性、そして感情に響くディテールまでが、繊細に調和しています。移動するだけの空間ではなく、乗員一人ひとりの感情や感覚に寄り添う体験が、このEXP15には備わっています。
ベントレー デザインディレクター ロビン・ペイジ氏 コメント
コンセプトカーの魅力は、新たなデザインを提案できるだけでなく、市場の方向性を探ることができます。SUV市場が拡大しているのは明らかであり、GT市場に関しても、4世代にわたるコンチネンタル GTの展開を通じてその本質を深く掴んでいます。
しかし最も難しいのはセダン市場です。嗜好が分化し、変化が著しく、従来型の“三箱構成”を好む顧客もいれば、“ワンボックス”デザインを求める人もいます。さらに、より洗練された高級志向の形を追求する声もあります。だからこそ、私たちにとってこのコンセプトは、人々の声に耳を傾け、感じ取るための絶好の機会といえます。
フルサイズのエクステリアが、クラシックとモダンを融合させた、爽快かつエレガントな新デザインへ
EXP 15コンセプトカーは、ベントレーが今後販売する車に与える、以下の5つの外装デザイン原則を具現化しています。
1.アップライト エレガンス
ベントレーのフロントデザインは、「美しくまっすぐに立つ」というデザイン哲学に基づいています。これは、ただの直線ではなく、わずかに弧を描くような繊細なラインで構成されており、品格と堂々とした佇まいを演出しています。その姿は、あたかも歩き出したサラブレッドが、誇り高く静止した瞬間のよう、力強さと静けさが共存する緊張感のある美しさが、ベントレーならではの存在感を際立たせています。
2.アイコニック グリル
アイコニック グリルは、EV時代に移行しつつある今もなお、ベントレーの“象徴的な顔”として継承されるべき重要なデザイン要素です。中央に縦のラインを配したこのグリルは、かつては内燃エンジンに空気を取り込むための機能パーツとして設計されていましたが、現在ではその役割を超えて、ブランドの美意識と個性を体現する表現の場へと進化しています。
3. エンドレス ボンネット ライン
エンドレス ボンネット ラインは、かつて大型の内燃エンジンを搭載するために設計されていたクラシック ベントレーのプロポーションを継承するものです。このデザインでは、サイドウィンドウの下から始まるラインが途切れることなく車体後部のピラーへと滑らかに伸びていきます。その造形は、1930年のベントレー ガーニー ナッティング クーペを彷彿とさせるものであり、伝統と美学の融合です。電動化によってエンジンルームのスペース的な制約が解かれたことで、EXP 15ではこの空間が2つのエレガントな収納スペースとして再構築されました。ピアノ式ヒンジを採用したエンジンカバーの造形は、まさにこの名車へのモダンなオマージュです。
4. レスティング ビースト
レスティング・ビーストは、EXP 15のサイドビューやトップビューに現れる力強さを表現します。ベントレーの象徴的なスタンスは、リア・ホーンチ(後輪上部の筋肉のように張り出した形状)に最もよく表れます。
さらに、車体の全体バランスにおいても「リラックスした水平姿勢」が重視されており、前のめりにも後ろにも偏らない、安定感ある立ち姿が求められます。プロポーションにも独自のこだわりがあり、ルシガイ氏は「キャビン:ボディ=1:2」の比率、つまりキャビンが上部の1/3、ボディが下部の2/3を占める構成が理想であるとしています。
5.プレスティージャス シールド
最後の原則「プレスティージャス シールド」は、EXP 15のリアエンドにおける存在感に集約されています。この広くクリーンな面は、かつてのベントレー車においてラゲッジスペースとしてボディから独立していた部分に着想を得たものです。EXP 15では、この面がリアゲートに統合され、新たにデザインされたウィングドBエンブレムが中央にあしらわれています。周囲には、精緻なダイヤモンドパターンのリアライトが配され、格式と先進性が見事に融合したビジュアルが完成しています。
ベントレー デザインディレクター ロビン・ペイジ氏 コメント
かつては空気を取り込むための機能部品だったグリルも、今では光の技術によって、ブランドの世界観を映し出す“デジタルアート”のような存在に進化しました。これからも、それはベントレーの象徴であり続けます。
エクステリア・デザイン部門責任者 ドメン・ルシガイ氏 コメント
最高のベントレーは、このリア・ホーンチによって強い“筋肉”とエネルギー感をまとっています。それはまるで、大型のネコ科動物が脚を折りたたんで構える姿のようです。
彫刻のように削り出された筋肉質なフォルム
EXP 15のボディワークは、先述のプロポーション哲学に忠実に従いながら、ベントレーの現代的な造形美の進化を示す新たな方向性を打ち出しています。その表面処理は、単なる金属加工を超えた彫刻的表現とも言えるもので、見る者に強烈な存在感を与える「動の美」を体現しています。
ベントレーのデザインディレクター、ロビン・ペイジ氏とそのチームは、この未来的な造形において、特に重要な以下の3つのデザイン特徴を定義しました。
1.モノリシック プレゼンス
車全体が、まるで一枚岩から削り出されたかのような圧倒的な存在感を放ちます。ディテールごとに分断されるのではなく、すべての要素が一体となって統一されたビジュアルを形成し、モダンかつ堂々とした印象を与えます。
2.マスキュラー フォーム
ボディには張りと緊張感があり、潜在的なエネルギーを湛えた造形が特徴です。それは、鍛え抜かれたアスリートの身体のように力強く、視覚的に「動き出す前の瞬間」を想起させるダイナミズムを備えています。
3.カーヴド プレシジョン
重量感と軽快さの絶妙なバランスを実現するのが、この「彫刻的な精緻さ」です。面の構成やラインは明確かつ洗練されており、重々しさを感じさせずに、クラフツマンシップと現代的なエレガンスを両立させています。
次世代の外装照明とエアロ技術によりベントレーの象徴的なダイヤモンドパターンをさらなる高みへ
EXP 15の外装は、単なるプロポーションにとどまらず、機能性と美しさを兼ね備えたディテールによってさらに引き立てられています。
フロントには、車両側面に向かって配されたスリムな4本のストリップライトが組み込まれています。上部2本は垂直に、下部2本は内側に向かって曲げられ、ホイールアーチの内側に沿って配置されることで、車体の輪郭をシャープに際立たせる効果を発揮します。これらのライトは、大型フロントグリルの輪郭を縁取る役割も担っており、ウィングドBエンブレムのすぐ下から垂直に伸びる中央のライトスパインがグリルを縦に2分割。そこには、ベントレーを象徴するダイヤモンドキルティングのモチーフが横方向に再構成され、LEDライトによって現代的かつ立体的に浮かび上がるようデザインされています。
車両の両サイドでは、フロントホイールアーチ直後に設けられた2つの大型通気口が空気の流れを整え、車体のボリューム感を視覚的に分割。空力性能だけでなく、グラフィカルなアクセントとしての効果も備えています。
リアセクションでは、細く引き締められたライトが、広くクリーンなプレスティージャス シールド面を縁取るように配置され、空力的な効果を発揮すると同時に、ダイヤモンドパターンの緻密な立体表現と奥行き感を演出しています。さらに、空力性能を高める要素として、ルーフ後端から展開する2つのアクティブ スポイラーと、車体下部のアクティブ エアロディフューザーも備えており、走行状況に応じて自動的に最適な空気の流れを制御します。
バーチャルリアリティが描き出す、革新的な3シートインテリア
EXP 15の未来的なキャビン設計は、1930年の「スピードシックス ガーニー ナッティング スポーツマン クーペ」の車内にも影響を受けています。座席数や機能といった要素においては、具体的なレイアウトや形状をそのまま採用したのではなく、そこに込められた発想やコンセプトを取り入れています。
インテリア部門責任者 ダレン・デイ氏 コメント
当時のベントレー会長のウルフ・バーナート氏は、HJマリナー製のスピードシックス4ドア ウェイマン生地製セダンを所有しており、1930年に“ブルートレイン”とレースをしました。さらに、彼は、ガーニー ナッティングのボディで唯一のワンオフ スピードシックス クーペも製作していました。そのクーペはレース当時まだ完成していなかったのですが、今ではその車こそが象徴的なベントレーとして語られるようになりました。私たちが影響を受けたのは、ユニークなウィンドウラインと、グランドツアー向けに特化された非常に滑らかで洗練されたプロポーションを備えた、3シート車のアイデアでした。その精神を受け継ぎ、EXP 15も3シートレイアウトを採用しています。運転席側のドアは、運転席とコクーンのように包み込むリアシートへと通じ、また、パノラミックルーフの一部と2枚のコーチドアが助手席側に上方向に開く構造で、より滑らかでラグジュアリーな乗降を可能にします。また、助手席は45度回転する柔軟な設計になっています。そのシートにより、スーパーカーのように無理に身をよじって降りる必要はなく、乗員はスムーズに降りることができます。静かに立ち上がって降りる、その様子は気品に満ちています。
もしあなたが、女王陛下のために私たちが設計した車をご覧になれば、ドアの開き方や到着の所作まですべてが計算されていると分かるでしょう。その『到着の芸術(the art of arrival)』の感覚を再現することが、私たちにとって非常に重要でした。
助手席は、乗員の気分やニーズに応じて複数のポジションへ移動可能です。例えば、「コ パイロットモード」では運転席の隣に前方配置され、「スタンダード設定」では後部座席の手前にスライド、「リラックスモード」ではリクライニングして使用できます。「スタンダード設定」「リラックスモード」では、広大な足元スペース(レッグルーム)が生まれ、さらにこのコンセプトカーでは、コンチェルティーナ式床下収納システムによってフットレストが床へ折りたたまれ、ペットや手荷物用のスペースが現れます。
これらの収納スペースは、トランクを開けることなく車内からアクセスできる設計になっており、荷物をしっかり固定できる構造も備えているため、実用性と利便性を両立しています。
さらに、リアハッチを開けるとトランク内には2つのコンパクトなシートが展開され、周囲を照らす雰囲気のあるランプや、冷たい飲み物を収納できる冷蔵庫も装備されています。この冷蔵庫は、後部座席からスライド式で引き出すことができるようになっており、快適で実用的なテールゲートパーティー空間として活用できます。
自然素材と先進テクノロジーが融合する、新たなインテリア原則
1. ウィング ジェスチャー
ベントレーのキャビンで長年親しまれているウィング ジェスチャーダッシュボードは、羽を広げたベントレーのエンブレムをモチーフとし、空間に広がりと優雅さをもたらします。
2. ボールド グラヴィタス
ラグジュアリー素材を惜しみなく広い面積で使用することで、触れた瞬間に“本物”を感じさせる存在感を演出。素材の質感がそのままブランドの重厚さを語ります。
3. コクーニング ヘイブン
乗る人を優しく包み込むような空間づくり。助手席には、左側から背面を覆うように張り出すキャノピー(天蓋)が備えられ、プライバシーを保ちながら上質な安心感を提供します。
4. アイコニック ディテール
ベントレーらしさを形作る細部へのこだわり。“ブルズアイ”エアベント、刻み加工のスイッチギア、ダイヤモンドキルティングのシートなど、伝統を受け継ぐディテールが空間に品格をもたらします。
インテリア責任者 ダレン・デイ氏 コメント
私たちは木材や金属、そして最近では石などの自然素材を車に使っています。人間の脳は、それが本物かどうかを見分けることができます。なぜなら、人は日頃から木や動物、自然の形に慣れているからです。だから私たちは、それらの形を過剰にデザインすることはせず、素材の本質に沿った形で設計しています。「ボールド グラヴィタス」とはつまり、ひとつの素材を惜しみなく使うことによって、木材の突板の美しさや金属の輝きをしっかり堪能できる自信の表れなのです。
テクノロジーが先回りする、オンデマンド&シームレスな体験設計
EXP 15では、新たに「マジカル フュージョン」という発想が取り入れられています。これは、物理的な素材とデジタル機能を状況に応じて切り替えたり、自然に融合させたりすることを目指したコンセプトです。例えば、ベントレーで従来から採用されていた「ローテーティング ダッシュボード」は、必要なときにはインフォテインメント画面を表示し、不要になると木製パネルへと回転して隠す機能を持っていました。EXP 15ではこれをさらに進化させ、ダッシュボード全体がデジタルインターフェースとして使える一方で、オフにすればヴェニアの美しい表面が現れ、クラシカルで上質な雰囲気に変化します。さらに、ダッシュボード中央の奥には、複数の細いパーツが動き・光る、時計のような装置が搭載されており、これはデザインチームによって「メカニカル マーベル」と名付けられています。この装置は、車の進行方向やバッテリー残量などの情報を表示するだけでなく、機械芸術のような美しさを持つビジュアルオブジェクトとしても空間に存在感を放ちます。単なる表示装置ではなく、見る者の感性に訴えるアートピースとして機能するのです。
デザインディレクター ロビン・ペイジ氏 コメント
多くの人々が、完全にデジタルな体験に少しずつ飽きを感じ始め、一方で物理的な手触りや機械的な動きに再び魅力を見出しています。そこで私たちは、デジタルと物理をあえて融合させるという選択をしました。そうすることで、それぞれの“いいとこ取り”ができるからです。例えるなら、片手に美しい機械式腕時計を、もう片方に高機能なデジタルウォッチを着けているような感覚。その2つが重なり合ったときに生まれる、魔法のような体験を、ぜひ皆さまにも感じていただきたいと考えています。
英国の伝統工房が生み出す、素材とカラーの革新
EXP 15のエクステリアには、「パラス ゴールド」と呼ばれるサテン仕上げの塗装が施されています。この塗装は液体金属のような質感を持ち、よく見ると金白色の繊細なハイライトが浮かび上がるのが特徴です。
インスピレーションの源となったのは、歴代のベントレー「スピードシックス」に採用されていたニッケル製グリルやドアハンドルといったクラシックな意匠です。この伝統的なモチーフを現代的に昇華させているのが、新たに登場した超極薄のアルミニウム顔料です。この顔料は、レーダー機器に影響を与えないという特性を持ち、安全性を損なうことなく車両の前方に塗布することが可能です。さらに高い反射率を備えており、LiDARシステムによる検出にも適しているため、自動運転技術にも対応した設計になっています。
インテリアにおいても、EXP 15は伝統と革新の融合をテーマに仕上げられています。バーチャルリアリティ技術を活用したデザイン開発のなかで、カラー・トリム・仕上げチームは、過去と未来をつなぐ4つのテーマを創出しました。
キャビン後部には、乗員の心と身体の安らぎを高めるウェルビーイングスペースが設けられており、そこにはシルクのジャカード織物が使われています。このファブリックは、1903年創業の英国の老舗ミル「ゲインズバラ」社が製造したもので、1980年以来、英国王室にも納入されている格式高い素材です。
こうした伝統的な素材に加え、EXP 15では革新的な新素材も随所に採用されています。例えば、「アクリル クチュール」と呼ばれる、金属メッシュをアクリルで封入した素材は、照明と組み合わせることでダッシュボードに鮮やかな立体感(3D効果)を生み出します。さらに、ベントレーを象徴するキルティング模様が施されたドアパネルなどの内装部には、カットされた突き板の裏側にバックライト素材を仕込み、光によって浮かび上がる未来的な演出を可能にしています。
カラー・素材・仕上げ・ビスポーク部門責任者 アンドレア・イェンセン氏 コメント
突き板にダイヤモンドパターンのカットを施し、そこにジャカードシルクやハイブリッドメッシュを当てて光を照らすと、私たちがアクティブ3Dキルトと呼ぶ視覚効果を作り出せるのです。また別の部分では、100%ウール製のテキスタイルが使用されています。これは、イバラ除け布の発明者であり、250年以上の歴史を持つ英国の織物メーカー「フォックス ブラザーズ」製です。このウールは、ダムソン オンブレ(グラデーション)効果として、EXP 15のエグゼクティブ仕様トリム内装テーマに使われ、実物の3Dプリントによるチタン仕上げと並べて配置されています。さらに、素材選定と高精度な3Dプリント製造によって、これらのメタルディテールは、車体の重量を削減し、生産時の廃棄物も最小限に抑える設計となっています。
21世紀型グランドツアラーに求められるすべての性能と技術を搭載
EXP 15は、大胆なスタイリングだけでなく、21世紀のグランドツアラーの在り方を見据えたパワートレインの可能性についても示唆しています。開発チームは、サステナブルと快適性を両立させながら、長い航続距離と高速充電性能を兼ね備えた、完全電動・四輪駆動のパワートレインを構想しています。それは、現代のベントレーに求められる洗練された移動体験に応えるものです。EXP 15はあくまでデザインコンセプトであり、技術仕様やプラットフォームなどの詳細は現時点で公開されていませんが、デザイン面において、1930年の「スピードシックス ガーニー ナッティング スポーツマン クーペ」は、EXP 15の創造的出発点として確かに存在しています。しかし、EXP 15はそのクラシックモデルを再現したり模倣したりするものではありません。外観はまったく異なり、単なるヴィンテージ風ではなく、現代と未来の感性で再解釈されたラグジュアリーデザインが貫かれています。
EXP 15は、2026年に登場予定のベントレー初の小型完全電動量産モデルとは異なるコンセプトカーですが、一部のデザインが、さりげなくEXP 15のエクステリアに取り入れられています。また、インテリア面においてもEXP 15は、将来の量産モデルに活かせるような先進的なデジタル技術やユーザー体験のアイデアを提示しています。
つまりこの車は、見た目のデザインを提案するだけの存在ではありません。未来のベントレーがどんな価値や体験をユーザーに提供しようとしているのか、そのビジョンや考え方を具現化したモデルなのです。