ベントレーの新しいブロワーエンジンがクルーで蘇える
- ベントレー「ブロワーコンティニュエーションシリーズ」のために新たに開発されたエンジンの第1弾がベントレーのテストベッドで始動
- 1928年製スーパーチャージャー付4½リッターのオリジナルを忠実に再現した新造エンジン
- 最初のエンジンが特別に用意された、マーリン航空機エンジン用に使用されていたテストベッドで始動
- ベントレーのエンジニアがパワーランの前にエンジンの微調整
ベントレーマリナーのブロワーコンティニュエーションシリーズの第1号車のエンジンが、ベントレーのクルー工場で特別に準備された専用のテストベッドで初めて始動されました。
ブロワーコンティニュエーションシリーズは、1920年代後半にサー・ティム・バーキンがレース用に製作した4.5リッターのスーパーチャージャーを搭載した、史上最も有名なベントレーのひとつである「ブロワー」を、12台新たに再現したものです。世界初の戦前車のコンティニュエーションシリーズであるこの12台は、世界中のベントレーコレクターや愛好家のために、既にすべて事前に販売されています。
プロジェクトのためのエンジニアリングプロトタイプである「カーゼロ」が完成し、ベントレーマリナーは、スペシャリストの専門サポートを受けて、最初のエンジンを再現しました。エンジンの製作中に、ベントレーのエンジニアチームは、ベントレーのクルー本社にある4つのエンジン開発テストベッドのうちの1つを準備し、作業を開始しました。このエンジンテスト設備は1938年の工場建設時からベントレーにあり、元々は第二次世界大戦中のスピットファイアやハリケーン戦闘機用に工場で生産されたマーリンV12エアロエンジンの試運転やパワーテストに使用されていました。
テストベッドの準備には、エンジンを格納するためのブロワーのフロントシャーシのレプリカを作成し、それをコンピューター制御のエンジンダイナモメーターに取り付ける必要がありました。エンジンの測定と制御を行うための新しいソフトウェアバージョンを作成してテストを行い、ベントレーのエンジニアが正確なパラメータでエンジンをモニターして始動することができるようにしました。ブロワーのパワートレインは、ベントレーの最新の市販エンジンとはサイズや形状が大きく異なるため、今もベントレーに保管されているオリジナルのマーリンテストベッドの器具が、これらの特別なエンジンを搭載するためのテストベッドとして活用されています。
エンジンが完全に取り付けられた状態で、2週間前に最初の始動が行われ、現在、最初のエンジンは、フルパワーテストの前の定められた走行スケジュールのプロセスに入っています。
まずエンジンは20時間のサイクルでテストされ、アイドル状態から3,500rpmまでエンジン回転数と負荷条件の両方を徐々に上げていきます。各エンジンが完全に試運転された後、全負荷時のパワーカーブが測定されます。
テストベッド走行が完了すると、カーゼロのエンジンの次のステップは現実世界での耐久性試験です。車の組み立てが完了すると、トラックテストのプログラムが開始されます。走行時間と速度を徐々に増加させながら、より厳しい条件下での機能性と耐久性を確認していきます。このテストプログラムは、8,000kmのトラック走行で35,000kmの実走行に相当する走行距離を達成するように設計されており、北京~パリ間やミッレミリアなどの有名なラリーでの走行を想定しています。
スーパーチャージャー付4½リッターエンジン
新しく作られたブロワーエンジンは、1920年代後半にレースに出場したティム・バーキンの4つのチームブロワーのエンジンを忠実に再現したもので、クランクケースにマグネシウムを使用しています。
そもそも、ブロワーエンジンは、W.O.ベントレー自身が設計した自然吸気4½リッターエンジンとして誕生しました。それ以前のベントレーの3リッターエンジンと同様に、4½リッターエンジンには、シングルオーバーヘッドカムシャフト、ツインスパークイグニッション、各気筒に4つのバルブ、そしてもちろんベントレーの伝説的なアルミピストンなど、当時の最新のエンジン技術が結集されていました。W.O.の4½リッターエンジンのレーシングバージョンは約130bhpを発生させていましたが、ベントレーボーイズであるサー・ティム・バーキンはそれ以上のものを求めていました。W.O.は常に絶対的なパワーよりも信頼性と洗練性を重視していたため、より多くのパワーを得るための解決策は常にエンジンの容量を増やすことでした。しかしながらバーキンには別の計画がありました。それはその4½リッターエンジンをスーパーチャージ化することで、同時にそれはW.O.自身のデザインしたエンジンを「汚される」と思ったアイデアでした。
バーキンは、裕福な財政家ドロシー・パジェットからの資金と、クライヴ・ギャロップの技術力により、スーパーチャージャーのスペシャリストであるアムハースト・ヴィリエスに4½用のスーパーチャージャーの製作を依頼しました。ルーツタイプのスーパーチャージャー(通称ブロワー)は、エンジンとラジエーターの前に取り付けられ、クランクシャフトから直接駆動されます。エンジンの内部改造は、新しくて丈夫なクランクシャフト、コンロッドの強化、オイルシステムの変更などに及びました。
レーシングチューンでは、バーキンの新しいスーパーチャージド4½リッターエンジンの出力は約240bhpと強大でした。それゆえ、「ブロワーベントレー」は非常に速くなりましたが、W.O.が危惧していたように、いささか脆くもありました。1930年のル・マンで自然吸気のベントレースピードシックスの優勝に貢献するなど、ブロワーはベントレーの歴史の中で一定の役割を果たしましたが、12回レースに出場したものの、優勝は一度もありませんでした。